健康長寿のための食事
高齢になると歩くスピードが遅くなり、つまずきやすくなるなど身体機能の低下、日常生活に支障が生じる場合が増えてきます。特に後期高齢期(75歳以上)において、体力や意欲の低下によりさらに身体機能が低下し、介護を必要とする方が増えてきます。これらは、「歳をとったから」とあきらめるのではなく、生活習慣の見直しを行うことで、回復したり悪化の予防ができることがわかってきました。
健康長寿(高齢になっても元気に自立した生活ができる)のコツについて紹介します。
生活習慣病の予防および治療を行う
介護を必要とする方の要因において40~64歳の中年層に最も多いのは、脳血管疾患(脳卒中)です。脳血管疾患(脳卒中)は主に高血圧や糖尿病の合併症によるものです。食事や運動を気をつける、定期的に検診をうける、医療機関に受診するなどして生活習慣の予防および治療を積極的に行いましょう。
体重管理を行う
予期せぬ体重の減少は、倦怠感、意欲の低下、筋肉、筋力の低下、免疫力の低下を生じやすいです。起床や入浴の際体重計にのるなど、定期的に体重をはかりましょう。1年に4~5kgの体重減少は栄養不足の可能性が考えられます。
栄養バランスを考えて食事をとる
加齢により40歳を過ぎた頃から少しずつ筋肉は減少し、80歳の筋肉量は若年時の30~40%まで低下するといわれます。筋肉量が低下すると活力や筋力の低下、身体機能(歩行速度)の低下、体重減少、低栄養に陥りやすいです。また、高齢期において筋たんぱくの合成能力は低下しており、筋肉量が維持できるよう食事に気をつける必要があります。特にエネルギーやたんぱく質の多い食品の摂取に配慮することが重要です。
- 1日3回、主食・主菜・副菜がそろう食事にしましょう。
主食・・・炭水化物の多い食品であり、エネルギー源となる。
主菜・・・たんぱく質(※)やビタミンB群、鉄を多く含む。筋肉など体作りに重要な栄養素。
ビタミンB群は様々な物質の代謝に関与し、鉄は貧血を予防する働きがある。
副菜・・・食物繊維やビタミン・ミネラルの供給源。食物繊維は便量を増量し排泄を促す。
ビタミン・ミネラルは体の調子を整える働きがある。
「コレステロールがあがりやすいから」、「歯が悪いから」など、肉料理を避ける高齢者が多くみられます。肉は良質なたんぱく質を多く含む食品であるため、積極的にとりましょう。たくさん食べればよいのではありません。適量(1食あたり60~70g・豚しゃぶ用5枚程度またはひき肉ゴルフボール2個程度)をとるようにしましょう。肉料理が硬くて食べづらい場合は、薄切り肉やひき肉を使用するとよいです。
「生臭いから」、「骨があるから」など、魚料理を苦手とする方が世代を問わず多くみられます。魚に含まれる魚油には動脈硬化や認知症を予防する効果があり、最近の研究において(動物実験)、体脂肪の減少や体温上昇の効果があるともいわれます。また、魚にはビタミンDを多く含み、骨や筋肉を強くする効果が知られています。
腎機能障害のある方は、たんぱく質のとり方に配慮が必要な場合があります。医師や管理栄養士にご相談ください。
- 間食は1日1回。乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)、生の果物がお勧めです。
乳製品はたんぱく質やカルシウムを多く含みます。筋肉のほか骨・軟骨の材料となります。コップ1杯(180ml)程度の牛乳(ヨーグルト)またはスライスチーズ1枚程度が適量です。生の果物は食物繊維、ビタミンC、ミネラルを多く含みます。バナナならば1本、りんごならば半分、みかんならば2~3個です。だいたい片手握りこぶし程度が適量です。
- 規則正しく食事をとる
食べる時間を決めておくと、生活にメリハリがつきます。規則正しく食事をとることで、肥満や低栄養を予防することができます。食事の準備が困難な場合は、宅配食や市販の調理済食品(惣菜、缶詰、真空パック、カット野菜等)を利用するとよいです。
口周りの健康を維持する
「硬い物が食べにくい」、「液体でむせる」、「口が乾く」など口周りの問題を放置すると軟らかいものを選んで食べるようになります。そのため栄養の偏りや食欲、食事量の低下をまねき、筋力、筋肉量の低下、体重の減少など低栄養に陥りやすいといわれます。咀嚼・嚥下機能にそった食事の工夫を行う、定期的に歯科を受診するなど口周りの健康維持に努めましょう。
社会参加を行う
社会との関わりが薄れると、活動量の低下、健康維持の意欲が低下しやすくなります。ボランティア活動や地域の行事に参加する、旅行をする、近所の人たちと話をする、家族とともに食事をするなど、外出していろいろな人たちと関わりを持ちましょう。
運動習慣をもつ
適度な運動習慣をもつことは重要です。運動不足を放置すると筋力低下やバランス能力が低下し、転倒や怪我をしやすくなります。ウォーキングや筋力トレーニング、柔軟体操などの運動を無理のないよう続けることが大切です。心臓病などの生活習慣病、腰や膝の痛みなど持病のある方は、無理な運動をすることで症状が悪化することがあるため、医療機関に相談して運動を行いましょう。
筋肉は何歳からでも日常生活の中でケアをすることで鍛えることができるといわれています。「歳だから」とあきらめないで、元気ではつらつとした生活をおくることができるよう努めましょう。
管理栄養士は個々の状態にあった健康長寿の食事について提案をしています。受診の際、気軽にご相談ください。