主な疾患
尿路結石症
尿路結石は尿路、即ち腎臓・尿管・膀胱・尿道に存在する結石のことです。
結石が腎に存在する時は通常自覚症状はありませんが、膀胱へ向かって落下してくると急な強い痛みを背部から下腹部へかけて感じます。場合により血尿、吐き気、嘔吐などの症状が発生します。結石は飲水と薬物治療(飲み薬、痛みが強い時は坐薬や注射)により自然に排泄されることもありますが、場合により外科的な治療が必要となります。
患者さんの結石の状態や症状により最も適切な治療法をすすめています。
過活動膀胱
過活動膀胱とは、
尿意切迫感といい急にトイレに行きたくなり、がまんが難しい症状
頻尿
尿がもれてしまう症状
がおきる疾患です。
最近の疫学調査からこの疾患の患者数が極めて多いことが明らかとなり、40歳以上の成人における実数は約810万人にもなることが推定されています。
これらの症状のため外出や仕事中のトイレが気になり、 お悩みの方は多いと思われます。治療法は生活指導、膀胱訓練、抗コリン剤というお薬などです。
過活動膀胱と同じような症状を引き起こす疾患には膀胱癌、膀胱結石、膀胱炎などがあり、尿検査や超音波検査などを行ない診断します。
前立腺肥大症
前立腺は男性のみにあり、膀胱の出口に位置し尿道をとりまくように存在しています。加齢とともに前立腺は肥大し、尿道を圧迫することにより尿の出が悪くなったり頻尿になります。
肥大症の治療には薬物療法と手術があり、個々の症状の程度により治療方法を選択します。また症状が軽い場合は治療せず経過をみることもあります。
標準的な手術の方法は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)といい、お腹を切らずに内視鏡で肥大した前立腺を切除し尿道を拡げる手術です。この手術は30年以上の歴史があり確立された方法ですが、最近レーザーによる内視鏡治療が始まりました(ホルミウム・ヤグレーザーによる前立腺核出術(HoLEP)といいます)。
岐阜県では岐阜大学泌尿器科などでおこなっており、従来の内視鏡手術と比較して出血量や手術後の患者さんの痛みが少なく、入院期間も短くてすみます。手術が必要な場合TUR-PとHoLEPの2つの方法について比較して説明し、患者さんのご希望により治療可能な病院を紹介いたしております。
前立腺癌
前立腺癌は50歳以上の男性に発生する悪性疾患です。
癌による自覚症状は初期の段階ではありませんので、早期に発見するにはPSAという血液検査を受けてください。ただしPSA検査で発見できる癌は全体の9割であり、残りの1割は直腸診(肛門から指を入れ前立腺を触れてしこりの有無を調べる)で発見されます。
PSA検査で異常を示した場合は確定診断のため前立腺生検という組織検査を行ない、前立腺癌か否かが確定します。
- 生検の結果癌と診断されたらまず癌の拡がり・転移の有無を調べるためにCT、MRI、骨シンチグラフィーを行います。その結果病期(癌の進行状態)がわかります。
- 治療方法には薬物、手術、放射線の3つがあります。
また癌が非常に小さく悪性度が低い場合は、無治療で経過観察をする場合があります。
どの治療を選択するかは癌の拡がり(病期)、癌細胞の悪性度、PSA値、患者さんの年齢、余病の有無などにより決まります。
また、1つの治療のみでなく複数の治療を組み合わせる場合もあります。
- 治療の基本は、癌が前立腺にとどまっている場合は手術や放射線療法を行います。
癌が前立腺以外の臓器に転移している場合は全身の治療が必要です。
全身治療とは薬物療法(ホルモン療法、抗癌剤治療)のことを指します。
- 治療方法を決めるに当たって、
- 明らかにその治療が他より優れている場合
- 合併症などにより1つの治療しかできない場合
- どの治療を選択しても予後に大きな差がなく、最終的に患者さんに治療方法を決めていただく場合があります。
担当医と良く話し合ったうえで納得のいく治療方法を選択してください。
腎癌
腎癌は肉眼的血尿や腹部の違和感などの自覚症状で発見されることもありますが、最近では人間ドックなどで行われる超音波検査で偶然発見される患者さんが増加しています。
腎癌の特徴はお薬があまり効かないことで、手術で癌がある側の腎臓すべてを取り除くか癌を含めて腎臓の一部を切除する治療が主体となります。
治療方法は転移のない早期のものでは手術、肺などに遠隔転移がある場合は免疫療法(インターフェロン、インターロイキンⅡなど)と手術を併用します。
手術には開腹手術と腹腔鏡手術あり、腹腔鏡手術のほうが傷の大きさ、出血量が少ないこと、手術後の痛み、入院日数の点で開腹手術より利点が多い方法とされています。しかし腹腔鏡手術を行なうには豊富な経験と高度な技術が必要で、治療を行う医療機関の選択が必要です。場合により手術不可能なこともあり、その際は動脈塞栓術(レントゲン透視下に細いカテーテルを腎臓を栄養している血管の中へ入れ、腫瘍を阻血・壊死させる物質を注入する)、放射線療法(転移巣による疼痛などの症状緩和目的)、免疫療法などを行います。
膀胱癌
膀胱癌が発見されるきっかけとなるのは痛みなどを伴わない血尿です。また難治性膀胱炎を詳しく調べた結果見つかることもあります。
膀胱癌の治療は癌の深達度により異なり、表在性とよばれる浅い癌の場合は内視鏡手術を行い、癌が再発しないように薬剤を膀胱の中へ注入する治療(膀胱内注入療法)を行う場合があります。一方、浸潤性とよばれる深い癌の場合は膀胱全摘術を行い、更に尿路変更術という手術を同時に行います。
尿路変更術には尿管皮膚ろう術、回腸導管造設術、導尿型代用膀胱形成術、排尿型代用膀胱形成術があり、癌の拡がりや患者さんの年齢、全身状態により手術の方法が決定されます。
また浸潤性膀胱癌の場合手術以外に抗癌剤による化学療法、放射線療法を行うことがあります。