当院における新型コロナウイルス検査について
新型コロナウイルス感染症検査にはPCR・抗原・抗体検査の3種類あります。
【PCR検査】とは
検査したいウイルスの遺伝子を専用の薬液を用いて増幅させ検出させる検査方法です。
『加熱』・『冷却』の1サイクル毎に(1Ct毎に)、DNAを倍増する方法が『PCR法』です。このサイクルを繰り返して、1本>2本>4本>8本・・・とDNAを増幅してきます。39回繰り返すと(Ct39)、DNA『1個』が『1兆個』に増えます。これだけ増えると、検出が容易になります。
鼻咽頭を拭って細胞を採取し検査を行います。感染してから発症する数日前より検出可能とされています。主に体内にウイルスが検査時点で存在するかを調べるときに用います。
感度は約70%程度と言われており、検体採取をした場所にウイルスが存在しなかった場合などは感染していた場合でも陰性となってしまう場合があります。そのため当院ではウイルスを検出できなかったケースを「陰性」とはせず「検出せず」と表現して報告しています。
【抗原検査】とは
抗原検査とは、検査したいウイルスの抗体を用いてウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。 今、その病気にかかっているかを検査するもので、少ない時間で結果が出ることから速やかに判断が必要な場合等に用いられることが多いです。しかしPCR検査に比べ検出率は劣りますが、少ない時間で結果が出る、特別な検査機器を必要としないことから速やかに判断が必要な場合等に用いられ、インフルエンザの簡易検査をするときはこの抗原検査を行っていることが多いです。
【抗体検査】とは
過去にそのウイルスに感染していたかを調べる検査です。
ウイルスに感染すると形成されるタンパク質(抗体)が血液中に存在するかを調べます。体内に抗体ができるまでには時間がかかり、現在そのウイルスに感染していないことの検査に用いることは難しいとされています。
ウイルスに感染した場合だけでなく、ワクチンを打ったことによって抗体ができた場合にも陽性となります。こちらの検査は自治体の公表する新型コロナウイルスの検査実施数にカウントされません。
当院における新型コロナウイルスPCR検査はAbbott ID NOW™を用いたNEAR法を使用しています。
核酸増幅検査(NAT:Nucleic acid Amplification Test)には様々な種類があり、RT-PCR法、LAMP法、Smart AMP法等があります。テレビや民間業者ではこういった検査方法の違いを区別せずに「PCR検査」と呼んでいますが、正確には「核酸増幅検査(NAT)」のことです。「核酸増幅検査」とは、得られた検体(新型コロナの場合は鼻汁や唾液)の中に新型コロナウイルスの特徴を持った核酸が無いのか増やして発見を試みる検査です。この「核酸増幅検査」にはいくつかの種類があり、その中の大きな柱として「PCR法」と「等温核酸増幅法」があります。「PCR法」を用いた検査方法がRT-PCR法で、「等温核酸増幅法」を用いた検査方法にはLAMP法以外に複数の方法があり、Abbott ID NOW™を用いたNEAR法もその一種です。また、健康保険上ではRT-PCR法も含めて全て同じ扱いになります。
NEAR法とPCR法の違いについて
PCRは拡散増幅の中でも古典的な手技で、熟練した検査技師が施行すれば検査の感度はとても高いものの、結果が出るまでに時間がかかる(結果は実質翌日)のがデメリットです。多くの病院や民間検査会社で採用している新しい全自動のRT-PCR法の検査機器でも4-6時間かかり、感度がわずかに落ちるともいわれています。
当院で施行しているNEAR法は結果が5分から13分で出るというのが最大のメリットで、検査の精度もRT-PCR法と比較して同等です。
Abbott ID NOW 機器・検査試薬
- 新型コロナウイルスを疑う発熱外来での検査は無料ですが、自費検査の場合22,500円、新型コロナウイルス陰性証明書3,500円で検査可能です。
- 新型コロナウイルスは「デルタ型」「オミクロン型」と核のスパイク形状が変化していますが、PCR検査の核酸増幅検査なので、今後の新しい新型コロナウイルスが今後発生しても今の検査試薬で検査可能ですが、この機器では新型コロナウイルスが陽性の場合「デルタ型」「オミクロン型」等の区別は出来ません。
- 過去に新型コロナウイルスの検査試薬供給が不足した次期がありましたが、今は解消しています。緊急時における不足時の対応として岐阜市医師会臨床検査センターに外注委託してPCR検査のLAMP法にて検査を行います。